第三回「あなたと歌おう」
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- 決定がはやいというのは音楽に限らずですか?
- 森山
- どうかなぁ。たとえばメニューを決める時ってハンバーガーにしようかホットドックにしようかステーキにしようかって、うわーってあるとうわーってものすごい悩むんだけども。悩んでいる自分が恥ずかしくなって。「いいじゃん今食べなくたってきっといつか食べれるんだからはやく決めろよ!」みたいなものがあるんですよ。
- 矢野
- どれも食べたいって?
- 森山
- どうしよう、どうしようって。食べ物ごときに悩むなよって自分で自問自答して、一所懸命決めるですけど本来はすごく迷う方なんです。でもアッコちゃんといると、アッコちゃん決断がはやいから。「嫌」って言ったら嫌以外のなんでもないから、私も「オッケー」って悩まずにすむ、そのストレスがまったくないですね。決めてくれるのありがてぇっていうね(笑)。
- 矢野
- はやいっすよ。だってめんどくさいんだもの。
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- 決定は直感ですか?
- 矢野
- もちろん、考えるにたるものとたらないものがあるわけじゃない? きちんと考える必要があるものはしますよ。でもしなくてもいいものが年を取るとものすごく増えてきて、そういうものに関しては無駄に脳を使わないっていうか。
- 森山
- 確かにそうかもね。
- 矢野
- だからたとえば洋服買うのもはやいの。悩むのは文房具くらいのものですよ(笑)。
(一同爆笑)
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- 最近も東急ハンズでものすごい時間を使われたとか?
- 矢野
- そうそう。ノート一冊にね。そういうこともあるんですけどね、大抵は驚かれる。
- 森山
- はやいから?
- 矢野
- はい。二人とも悩むにたるかたらないかを見極めるのが上手くなってきたということなんでしょうね。
- 森山
- きっとフォーカスが合っているのよね。いろんなものを見たりいろんな経験をしてきたからどこが自分のポイントかをわかっているのよね。だから洋服を選ぶんでも「あぁ〜違うちがうちがう、それ!」っていう風にね。
- 矢野
- そうそう。どんなにお店の人がこれいかがですよって進めてきても、パッと見てそれ似合わないからって。
- 森山
- たぶん若い時は流行があると「おぉ〜」って一応かじってはみるんだけど、そうなるとバックとか靴とか全部合わなくなるんでそれもそろえちゃうでしょ。でもやっぱりちょっと違ったなって無かったことになって、また何かが流行ってくると「わぁ〜」っていくんだけど。そういう時間が長いじゃない? 流行の中で生きてきているから。だから流行ってもうほとんど10年ごとに繰り返していくから「おぉ来たきたきた」ってようやく自分の好きな時代が来たって。
- 矢野
- 今来てますよねぇ(笑)。
- 森山
- ねぇ。
- 矢野
- 糸井重里さんの昔の事務所名が「東京糸井重里事務所」だったんだけど。その名刺には『うまい、はやい、たかい。』って書いてあったの。それ以来、わたしの座右の名ですね。
- 森山
- えっうまい、はやい、たかい?
- 矢野
- えぇ。本当に一流の人っていうのはそういうことですよ。まず手順がはやい。だって迷わないから。そしてそれに対して値段が高い。
- 森山
- うん。
- 矢野
- だから一流に成りきれてない人っていうのはどんな職業でも時間がかかるんですよ。迷うから。
- 森山
- そうね。
- 矢野
- 絵でもそうじゃない。バッバッて描いて「はい終わり」って人もいれば、いつまでも「ここがさぁ」って修正する人。どうでもいいところを修正しちゃうの、だって正しくフォーカスされてないから。後はヘアカットなんかもやたらと時間かかって、鏡を見ながらこっちをちょこっと切ったりそっちをちょこっと切ったりする人いるでしょ。ああいうのは本当に駄目ですよね。
- 森山
- わかるわかる。
- 矢野
- これも始まれば終わるじゃないけど事実だから。生活の事実。
- 森山
- そうね。私、若い頃は「もっともっと」って思ってたかな。もっともっと上手くなりたい。もっともっと前に進みたいって。もっともっと美味しいもの食べたいとか、それこそもっともっとはやく、もっともっと良くってなんでもがむしゃらにやってしまうって感じだったんですけど。最近はそこまでの体力が無くなったので(笑)。ちょっとした「ま、いっか」みたいな「ここまでやったんだから、まぁ後はいいか」っていう感じに変わってきたかな。
- 矢野
- 私もピアノに関してはもっと上手くなりたいなって気持ちが衰えたことは無いですけどね。今回のツアーでも思い知りましたよ。
- 森山
- あら、そう? 私も毎回歌う時に思い知ってる。ないね。行き着くところはどこなんだろうって。
- 矢野
- 時々慢心するんですけどね(笑)。
- 森山
- 慢心するの(笑)?
- 矢野
- いいじゃ〜んって。最高だなぁって思うんだけど、また次の瞬間にはどん底に叩き落とされているっていう。自分のつくりあげるものに関しては私も森山さんも満足することは無いけれど、でもほかのことよね。
- 森山
- フォーカスされてるから。
- 矢野
- どうしてもここでハンバーグは和風でなければならないかっていうと、それはどうでもいいわっていう住み分けができているから(笑)。
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- なるほど(笑)。さて今回のアルバムのお話ですが、ずばりどんな方に一番聴いてもらいたいですか?
- 森山
- 聴いてくださるなら、どんな方にでも聴いてもらいたいです。
- 矢野
- そうね。
- 森山
- 「ただいま」の曲。なんか自分で「ただいま」って言った時に「お帰り」って言ってもらえるかのような曲なんで。これなんかは一人で頑張って働いているOLさんにどうかしら?
- 矢野
- 私は意外と若い女の子にも聴いて欲しいなぁって思うな。歌っている内容は事実だから。
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- たとえばこの曲一つ取っても、この中の世界観というか言葉というのは、お二人が日常で本当に使っているものであって、それは毎日使用している下着みたいな。
- やもり
- 下着(笑)?
- 矢野
- どうして下着なのよ(笑)?
- 森山
- 上なの下なの(笑)?
(一同爆笑)
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- 失礼しました(笑)。気を取り直して、「恋愛宣言」とか「わたしたちの明日」なんかは即戦力かなと?
- 森山
- そうね、「わたしたちの明日」なんて歌っていると本当ファイトわきますよね。「なんでもありの」って。
- 矢野
- ファイトわきすぎて最後二人の「ワァ〜〜」って感じがすごいですよね。火山が爆発したみたいな。
- 森山
- てやんでぇ〜って。女の子言葉なんだけど男前に仕上がっちゃった。
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- 怖い二人が組んだって曲ですね。
- 森山
- あのフレーズは私結構好きですね。「なんでもありの なんでも来いの わたしたちの毎日」。
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- 矢野さんはいかがですか?
- 矢野
- (小声で)なにやったか忘れちゃったの。
(一同爆笑。スタッフから収録楽曲リストを渡され)
- 矢野
- うわぁ〜13曲も入っているんだ。お得ね(笑)。
- 森山
- ね(笑)。
- 矢野
- 「温泉に行こう」もいいですよね。温泉に行きたくなっちゃう。「アイツは俺を知っている」も私はすごい好きですし。
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- カッコよすぎて初めて聴いた時にビックリしました。
- 矢野
- しかもそれが2曲目っていうのがいいでしょ。
- 森山
- いきなりね。絶妙なタイミングでしょ。
- 矢野
- でも「風のブランコ」が一番好きかも。歌っていてすごい気持ちがいい曲で。私はね、森山さんの詩がものすごく好きなんですよ。
- 森山
- ありがとうございます。
- 矢野
- そして最後の「あなたと歌おう」。
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- アルバムタイトルにもなっています。
- 矢野
- いいですよねこの曲。やっぱり私これで終わりたいなぁって思ったの。
- やもり
- 自画自賛です(笑)。
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- それでは最後に、お二人でコンサートツアーにキャッチコピーをつけていただけませんか?
- 矢野
- 「あなたも歌おう…歌えないと思うけど(笑)」っていうのは?
- 森山
- 上から目線? やれるもんならやってみろみたいな(笑)。
- 矢野
- ひどいわねぇ〜(笑)。「あなたも歌おう…できるもんなら」とかね。妙に高飛車な感じが合ってるんですよ。
- 森山
- 必ず一言余計についちゃうのよね(笑)。うーん、私は「あなたと歌おう…やってごらん」で。
- 矢野
- アハハ。優しいなぁ。
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- さて、やもりはどのくらい続きますか?
- 矢野
- (小さい声で)だって85歳まで…。
- 森山
- 85歳ね(笑)。今回はフォーキッシュだったでしょ。今後もいろんなアプローチができると思うんで。
- 矢野
- それはそうですね。なんでもできますよね。
- 森山
- 可能性がどこまであるのかわからないぐらいあるので。
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- ちなみに次回挑戦してみたいことは?
- 矢野
- 二人ミュージカル(笑)? すぐどっちかが死んじゃうの。
- 森山
- 時代劇?
- 矢野
- いいかも(笑)。大奥とかならできるかも。二人の大奥!
- 森山
- せめぎあい!
- やもり
スタッフ
- では大奥コーナーを作りましょうか?
(一同爆笑)
- やもり
- ということでぇ、次回作も乞うご期待です!
(おわり)
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